今日のニュースに
国立大13校、英語「中卒程度」で出願可 民間試験活用に疑問
という記事がありました。
「2020年度に始まる大学入学共通テストに導入される英語の民間資格・検定試験の成績について、全国の国立大学のうち、少なくとも13校が「中学卒業程度」を出願資格とすることが判明した。」というものです。
すでに、
・課してないのと同レベルじゃん…。
・国立レベル低すぎ
・こんな易しい試験で国立大合格かよ
・じゃあ高校要らないじゃんそんな大学高校に格下げしろよ
という、早合点してした意見も見られますが、いったいどういうことなのでしょうか?
英語の民間試験の導入の背景は?
国大協(国立大学協会)は、2020年度以降の大学入学共通テストにおいて、英語の民間試験を全受験生に課す方針を示していました。その成績の活用例として、
・大学の出願資格とする
・共通テストに加点する
・両方を組み合わせる
の3例を例示していました。

また、導入する場合には、CEFRのどのレベルを設定するのかを各大学で決めるように要請していました。CEFRとは、外国語を学習している人の言語運用能力を客観的に示すための国際標準規格で、下からA1,A2,B1,B2,C1,C2の6段階になります。英検で言えば、3級がA1、準2級がA2、2級がB1、準1級がB2、1級がC1に該当します。他にもGTEC、TEAP、TOEIC、TOEFLなども利用でき、それらも点数によってランクが決まっています。
国立大学の13校が、「出願資格」としてCEFRで一番低いA1を設定したというのが今回のニュースです。
ちなみに、今回の大学の決定は、「出願資格」であって、CEFRのA1が「合格基準」というわけではありません。
東大・京大はそもそも民間試験を利用しない?
それでは、他の大学はどうか見てみましょう。
東大・京大は、「英検準1級のB2」くらいでしょうか?他の旧帝大だとB1くらいは最低必要でしょうか?
実は、東大も京大も民間試験の成績を出願条件にはしないことが決まっています。他の旧帝大でも同じ方針が発表されています。
なんと、英語「中卒程度」どころか、英語「小卒程度」でも出願可能になっています。(*実際には高校の調査書で判断することになっていますので、本当に小卒程度で受験できるわけではありません)
東大は「民間試験の活用は、地域や経済的な格差によって受験機会が左右されるなどの課題が残る」
京大は「へき地に住んでいて、なかなか受ける機会がないなど色々なケースがあり、想定外の事情が起こることを懸念している。高校の書類をセーフティーネットとしたい」
と、公平性の確保を導入しない理由としています。
今回、公表した13大学も、本当は導入しないという選択をしたかったけど、文部科学省には逆らえないので、一番低い基準にしたのではとも考えられます。
英語の民間試験の導入の問題点は?
なぜ、国立大学で英語民間試験導入をしなかったり、基準を低く設定したりということがおきているのでしょうか?
そもそも、英語民間試験導入には以下のような問題点が指摘されていました
・異なる試験のスコアを用いて行うことは公平性を欠いている。
・試験の公正・公平な実施環境が確保されない危険性がある。
・採点が適正に行われない危険がある。
・地域的・経済的格差を助長する危険性や障碍を持つ学生への配慮が十分でない可能性がある。
といったものでした。
特に、 実施団体の異なる民間試験のスコアを比較するためのCEFR対照表については、スコアの境界の確定方法の根拠について、英語関係者から多くの疑問が寄せられていました。
こうした背景から、今回多くの大学で、英語民間試験導入に対して消極的な判断が相次いでいるのだと思います。
英語の民間試験の導入の今後
英語民間試験導入は大学入試改革の目玉の一つでした。しかしながら現状は、そううまくいかないようです。
大学では特に、公平・公正という面に問題点があると考えているようです。
今後徐々に改善されていくことになると思いますが、受験生を振り回すようなことにだけはならないことを祈ります。